『空は青ぐろく』

『私の中の賢治』展、
無事に終了いたしました。
こんな折にもかかわらず
足をお運びいただいた方々、
本当にありがとうございました。
1年ぶりに顔を見た方も多く、
早くまた自由にお会いできるようになりたいと
切に願っております。


その際にはワークショップも再開しますね。


さて、
その『私の中の賢治』展に出した最後のひとつ。
小さな作品です。




賢治の作品にはたくさんの鳥が登場します。
鳥好きのわたしとしては
やっぱり鳥は切りたいなあ……と
いくつか作品を読んでみました。


そして切りたいなと思ったのは『よだかの星』です。


いや〜。暗いんだわ。
本当は暗くない話なのかもしれませんが、
わたしには暗い暗い話でした。
よだかはいじめられるし
優しい言葉もかけてもらえないし。


このお話はもう一度10年ぐらいたって
また読んでみたいと思います。
その頃まだ切っていたら、
また切ってもみたい。
そのときにはどう思えるのか。
まだ暗いままなのか。
異なる姿が見えるのか。
もう一度見てみたいと思います。




『わんのゆき』



久しぶりに文字をガッツリ入れた切り絵を切りました。
(昔はよく切っていたんですが
いろいろあって、しばらくひかえていました。
でもまたやろうかな)


賢治の有名な詩『永訣の朝』がモチーフです。
『あめゆじゅ とてちて けんじゃ』
と死なんとする妹に頼まれて
賢治は外に積もる雪を碗で汲んできます。



この切り絵の中にはその詩の一節
「おまへがたべる
このふたわんのゆきに
わたくしはいま
こころからいのる」
……の文字が隠されています。


碗から立ち上がる草にまぎれて
とてもわかりにくいのですが
よろしければ探してみてください。

25cm×25cm額装

『くらむぼん』



わたしが大好きなフラワーリースでまとめた作品です。
題材は『やまなし』。
『やまなし』を読んでるコを切りました。


本を読んでいるときって
入り込んじゃいますよね。
そういう時って登場人物や背景や舞台設定が
自分のすぐまわりにあるような気がしませんか?
それが読書の楽しみのひとつでもあると思うのです。


この作品のなかには
「く」「ら」「む」「ぼ」「ん」の文字を
隠してみました。
ぜひギャラリーで絵の前で探してみてください。



20cm×20cm額装



『ひかりのさけ』



賢治の作品に『チュウリップの幻術』というお話があるのですよ。
これがまた不思議なお話なのです。


ある洋傘直しが
見事なお庭のあるおうちを通りかかり
そこで傘を直すことになるのですが
白いチューリップから湧き上がる光のお酒を
園丁と飲みながら幻を見る……という感じのお話です。


読んでいると
こちらも酔っちゃうみたい。
色と光とエーテルと文字がまじりあう小品です。


大好きなチューリップをここぞとばかりに切りました。
絵の中で喜んで「ひかりのさけ」に酔ってるのは
わたし自身かも(てへ)。

254mm×203mm(インチサイズ)額装済み