ひとつでいい

切り絵《すきっ》




ときどき仏教系や禅っぽいエッセイを読みます。
最近はあまり手にしなくなりましたが、
「ブラック杉谷」だったころには
よく読んでいました。


久しぶりにそのうちの一冊を手にとってみました。
よりよく生きるための100のコツ……みたいなやつ。
ずらりと「こうしましょう」的なアドバイスが載っています。


それぞれはものすごく正当なアドバイスなんです。
たとえば
「朝起きたらちょっとだけでも掃除をしよう」
「今日できることは今日しよう」
「人にはやさしくする」
「ひとつのことをコツコツ続ける」
「人に嫉妬しない」
「思いついたら実行する」
……などです。


でもね、自分でびっくりしたんだけれど、
当たり前の、正当な、素直なアドバイスでも
それが100個もずらりと並んでいると
ものすごい圧迫感があるんですよ。
これまでそう思ったことはないけれど
初めてそんなふうに自分のなかの抵抗を感じました。


こういうアドバイス(というノウハウというかライフハックというか)は
ある期間にひとつで十分じゃないのかしら。
少なくとも今のわたしには
たくさんの「〜しよう」「〜すべき」は不要だし
むしろお互いに邪魔しあって逆効果になる気がします。


この100個のなかから
いちばん今の自分に必要な項目をひとつだけとりだして
(あるいは、えいって当てずっぽうに選んで)
それを自分の暮らしのなかで
ゆっくりと噛みしめていくのがいいと思うのです。


たとえば「今できることをする」という項目だったら
これをやるのはとてもたいへんですよね。
「今できることをする」を
自分なりに因数分解して
ゆっくり本当に自分のなかに落とし込んでいく。


そうしていかないと、
やっつけでやっていっても
自分の中には何も残らないのではないかしら。


そんなことをこっそり思ったのでした。

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